葛藤を打開し成長するのが主人公?

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やっぺー さん 2020年03月31日 23:45

現在制作している読み切りの中では、大まかなプロットとして
①ヒロイン(?)が悩みを抱えている
②その解を既に持つブレない生き方を貫いている主人公(と出会う
③その出会いにより気づき、ヒロイン(?)が悩みに対する答えを導き出す
というキャラと構成になっています。

脚本術の基礎としてよく「シナリオは主人公の成長物語である」とはされていますが、この場合葛藤を乗り越え成長したのは明らかにヒロイン側になると思います。
主人公は、答えを出したものの展開的窮地に陥ってしまうヒロイン(?)を救うためのヒーローとしての登場はしますが、内面の葛藤などは現状入れておりません。

つまり、葛藤を介さない初めから自身の解を持ち続けているヒーロー型の主人公というのは脚本的にあまり望ましくないものなのでしょうか。
葛藤と成長を描いた場合、それはヒロインではなく主人公に据えられてしまうのか。この2点に悩んでいます。
主人公のキャラそのものは印象的かつ人間味があり親しみやすいとは思うのですが。

個人的には主人公の過去エピソードに触れ、共感できる動機やドラマ性を描ければいいのかなぁと思案しております。

補足

ちなみに↑の主人公の過去エピソードに触れるという案は「るろうに剣心」や「鋼の錬金術師」からなぞったアイデアです。双方主人公が1話の時点で実力的にも精神的にも強かったので。

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中野の漫画妖怪イグチ さん2020年04月01日 04:15

この質問には、持ち込みや企画出しの先の編集部・編集者の方針が大きく関わりますので「完全な正解」は無いと思って、以下の私の話を聞いてくださいませ。

ふた昔前くらいまでは、少年漫画の読者層の大半は「少年(人間の子供年齢の『男性』)」でしたが、近年になるにつれ、少年誌を読む女性読者が非常に増えて、一部の編集部も「女性読者受けする連載」などを掲げるようになりました。

その中で、「やっぱりメインターゲットは男の子なんだから・派」の編集者と<>「いまや女の子が感情移入できる漫画こそが需要・派」に分かれてしまっている状態です。

ですので、仮に現在制作している作品が完成して持ち込みした時など、
出会った編集ごとに真逆のアドバイス・いわゆる「賛否両論」を言われることを覚悟しておいてください。


そのうえで、私個人の見解も多分に含まれますが、創作の在り方として、

女性ヒロインが成長して、男性ヒーローは強さゆえの牽引役・・・というのは
アリだと思います。

まさにご自身で例示してくださった 「るろうに剣心」「ハガレン」などがありますし、古くは「北斗の拳」なども、初期段階からケンシロウが最強に強いヒーローであって、成長物語でないのに結果売れた名作、です。


ただし! そんな「最強男ヒーロー」を描く系であっても外せない要素はあります。


それは男側が「なにかしら『変わる』」という点です。

るろうに剣心を見てみましょう。剣心は戦闘も精神も強い英雄でしたが、薫を助けるために剣を振るって・・その後
流浪人(るろうに)、流れるのを「やめる」という決断をしました。

自分は改名しても伝説の人斬りだから、他人を巻きこむ、他人に関わるのはもうやめよう・・という性格だったのが、「守りたい女性や友人がいる環境」に「興味を持ち、人生を進む」覚悟をしました。最初と「変わって」います。


北斗の拳でもケンシロウは流れ歩いている孤高の拳闘士であり、北斗の正式伝承者になることだけが目的だったのが最初の段階。
しかし、リンやバット、ライバルでありながら性格の合う仲間レイなどに出会っていくうちに、継承者となるためだけに強くなるだけ・・・で済ませず、
「人を救う拳」を振るいたいという自己欲求に目覚め「変わって」います。


これらが漫画の全てではありませんので、完全正解といえるかは別です。

ただ、女性ヒロインが成長者であり、男性ヒーローが英雄最強である・・
という漫画においても、ヒット作となっているのは、

男性英雄はその作品内において  「なにかが最初とは変わる」 という
結論を以って、「2人の出会いと共闘は意味のあるものだったんだなぁ」
という感想と充実感を読者にあたえるパターンが圧倒的に多いです。



ただ、そこまで熱意をもって描ききっても、持ち込み先の編集さん次第では嫌がられる恐れはあります。

しかし、その作品に本当に光るモノがあるのならば、多数の出版社を持ち回している間に、理解してくれる編集者に当たる可能性も少なからずあるでしょう。

この回答へのお礼

中野の漫画妖怪イグチさん
このようなハッキリしない質問に明快な解答をいただきありがとうございます。

剣心も一話でるろうにを辞める心の変化があったということは確かに!とハッとしました。ヒーロー側の信念がブレないことと心の変化があることは矛盾しないということは何より大きな気付きとなりました。
ヒーローがただヒロインを救うだけの舞台装置になってしまうことも無意識のうちに危惧していたのだと今なら気付けます。心の動きが大事なんですね。

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小書会 さん2020年04月02日 16:56

長くなりましたので、先に結論を書きます。
・脚本術に当てはまらない主人公だから「望ましくない」ことはない
・「完璧なヒーローの主人公」を描きたいのではなく「成長物語」を描きたいのでは?
・見せ場がないと主人公っぽく見えない
・ヒロインを主人公にしてプロットを書いて比べてみる

-----

まず主人公について、自分の意見としては「望ましいもへったくれもなく、主人公となった以上主人公」だと言えます。しかし解決にはなりませんので、現状から考えていきます。話の全体がまとまりつつある状況で主人公に対して「望ましくない」と判断を下した理由が何かを明確にできると納得のいく結論に至ると思います。

*「シナリオは主人公の成長物語である」という訓示を守ろうとしている

脚本術に忠実に描くことを至上命題としていても、すべての題材がその基本をなぞれるわけではありません。主人公のキャラクターを作った段階で「ブレない」という性格を与えたのであれば、その段階で主人公の成長物語の路線からは外れています。参考にしている脚本術が何かはわかりませんが、成長物語でなくても話を面白くつくる演出方法がまだあるはずです。

主人公がどんな話でも「一番前に出て、沢山しゃべって、とても感情豊か」とは限りません。単に多くの人がそう描いていて、多くの読者が読んでいるというだけです。そうでない、たとえば陰気で偏屈な主人公でも素晴らしい作品だったり、人気のあるキャラクターだっています。

*主人公が成長しないことに納得がいかない、違和感がある

そもそも「主人公が努力して成長する様子が好き」という性格なのに主人公が成長しきっている作品を描こうとしている可能性が少しでもあれば、そもそも主人公がブレない話を描くのに向いていないかもしれません。今回の場合「主人公の成長物語」という役割をヒロインが担っている、つまり本質的に描きたいものが「ブレない主人公」ではなく「成長物語」に無意識下でなってしまっているかと思われます。ヒーロー型の主人公が望ましくないという言い方よりも、脚本上誰かが成長するのにヒーローの存在が必要だからヒーローを出したというほうが合っているかもしれません。

-----

次に「葛藤と成長を描いた場合、それはヒロインではなく主人公に据えられてしまうのか」という問いについてですが、こちらは「作品の中で主人公とは、葛藤したり成長するキャラをいうのか」という解釈で考えていきます。この悩みは先に述べた通り葛藤もしないし成長もしない主人公はあり得ます。とても雑な言い方ですが「主人公だと作者が定義すればそのキャラクターは主人公」です。脚本術の定型に当てはまらなくても、主人公っぽい見せ場を作ってしまえば紛れもなく主人公にできます。

*葛藤しているだけだと見せ場が作れない

プロットの中で成長するのはヒロインだけのようですが、それだけが主人公になれる条件ではありません。仮に、成長するからヒロインの主人公格上げを行ったとしましょう。そのとき、ヒロインの考え方が変わるような「元主人公の名台詞」が中くらいのコマで、ヒロイン(現主人公)の「そうか…そういうことなんだ!」という解決のコマが1ページくらいの大きい絵になりました。こうなると、ヒロイン(現主人公)の「そういうことなんだ!」が明らかに見せ場として弱すぎます。演出がとても上手な方だと、ここまでの前振り次第で「そういうこと」を名シーンに仕立て上げることも可能ではありますが、やっぱり読み手としては「元主人公の名台詞」が一番大ゴマで盛り上がってほしいわけです。読む人は「葛藤してるか」「成長しているか」ではなく「キャラが立っているか」「魅力的か」で主人公かどうかを嗅ぎ分けていると思います。
「シナリオは主人公の成長物語である」という言葉の飲み込み方がそのまますぎて囚われてしまっているように見受けられますが、シナリオには「主人公の見せ場」があって「主人公が成長する話」も入っているといいなあ、くらいのとらえ方に改めてみると少し気が楽になるかもしれません。

*もうヒロインを主人公にしてしまう

ここまでは「そんなことないよ!その主人公でも十分主人公だよ!」という説得のつもりで書きましたが、それでもまだ納得がいかなかったり、不安がある場合は、ヒロインを主人公にしてプロットをもう一度練っていただいたほうがいいかもしれません。「シナリオは主人公の成長物語」というのがポリシーであるとしたらもうこの手しかありません。
出来上がった2つのプロットを見比べて、面白そうだと思ったプロットでネームを切っていただくのが、私の考え得る中で一番手っ取り早い解決策です。

この回答へのお礼

小書会さん
これほどまでに文を尽くして解答してくださったこと大変ありがたく思います。

まさに、「主人公が成長する」ことに囚われ過ぎていたのだと今は考えています。
個人的には、生まれた主人公(ヒーロー)は魅力的なキャラをしていると思います
なにより、そのキャラを主人公にした話を作りたいとも感じているので、
その方針で作品を制作してみようと決めました。

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